相続放棄の期限と手続き|3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する方法を解説

相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内です(民法第915条)。この3ヶ月間を「熟慮期間」と呼びます。期限を1日でも過ぎると、原則としてすべての財産・負債を相続する「単純承認」をしたとみなされます。
借金があった場合はその返済義務を負うことになります。

相続税申告の期限(10ヶ月)とは異なります。相続放棄を検討している場合は最優先で動いてください。

相続放棄できるか確認するチェックリスト

まず以下を全て確認してください。

  • ☐ 相続開始を知ってから3ヶ月以内である
  • ☐ 被相続人の財産を処分していない
  • ☐ 預金を引き出していない
  • ☐ 不動産を売却していない
  • ☐ 借金の返済を代わりにしていない
  • ☐ 家庭裁判所に相続放棄の申述をまだしていない

一つでも当てはまらない項目がある場合は、そのまま手続きを進めると放棄できないリスクがあります。特に財産の処分については行為の内容・金額・状況によって判断が異なるため、早めに弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。

期限の起算日はいつか

起算日は「自己のために相続の開始があったことを知った日」です。これは以下の2つを両方知った日を指します。

  1. 被相続人(亡くなった方)が死亡したこと
  2. 自分がその相続人になったこと

通常は被相続人の死亡当日に知ることが多いため、死亡日が起算日となります。

計算例:1月15日に死亡・当日に知った場合 → 4月15日が期限
期限日が土日祝日の場合は翌開庁日が期限となります。

以下のような場合は起算日がずれます。

  • 疎遠だった親族が亡くなり、数ヶ月後に知らされた場合 → 知った日が起算日
  • 先順位の相続人(子など)が全員放棄したため自分が相続人になった場合 → 先順位が放棄したと知った日が起算日

相続放棄と遺産分割協議は全く別の手続きです

非常に多い誤解として、遺産分割協議で「私は何ももらいません」と言うことと、相続放棄は別物です。

遺産分割協議で「もらわない」と言っても借金は相続したままになります

法律上の相続人であることは変わらないため、被相続人の借金の返済義務は残ります。借金も含めて相続権そのものを失うには、家庭裁判所への相続放棄申述が必要です(民法938条)。

被相続人に借金がなくても、後から督促状が届いた・保証債務が発覚したというケースもあります。
「財産がなかったから遺産分割協議で話し合いを終わらせた」という場合でも、借金が見つかれば返済義務が残ります。

相続放棄とは何か・できる人

相続放棄とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産(借金)も一切引き継がないようにする法的手続きです。主に以下のような場合に利用されます。

  • 被相続人に多額の借金がある場合
  • 相続争いに巻き込まれたくない場合
  • 特定の財産だけ引き継ぐ必要がない場合

重要な注意点

  • 一度申述が受理されると撤回できません
  • 相続放棄をすると相続人でなかったとみなされるため、他の相続人の遺産分割協議にも参加できません
  • 相続放棄により次の順位の親族に相続権が移ります。事前に親族への影響を確認してください

相続放棄の手続きの流れ

  1. 財産・借金の調査(できるだけ早く)
    被相続人の預貯金・不動産・借金・保証債務などを調査します。借金の有無が不明な場合も3ヶ月以内に判断が必要なため早めに着手してください。財産の評価については相続税はいくらからかかる?も参考にしてください。
  2. 必要書類の収集
    申述人と被相続人との関係によって必要書類が異なります(後述)。第三順位(兄弟姉妹・甥姪)の場合は戸籍収集に時間がかかるため特に早めに動いてください。必要書類については相続登記の必要書類一覧も参考になります。
  3. 相続放棄申述書の作成
    家庭裁判所のホームページから申述書をダウンロードし記入します。収入印紙800円を貼付します(申述人1人あたり)。
  4. 家庭裁判所への提出
    被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。窓口持参または郵送どちらも可能です。
  5. 家庭裁判所からの照会書に回答
    申述後、家庭裁判所から「照会書(回答書)」が届きます。相続放棄の意思を確認するための書類です。期限内に記入・返送してください。
  6. 相続放棄申述受理通知書の受領
    審査が通ると「相続放棄申述受理通知書」が送付されます。これで手続き完了です。債権者に証明する必要がある場合は「相続放棄申述受理証明書」(1通150円)を別途申請します。
相続放棄後も相続税申告が必要になる場合があります。他の相続人が財産を取得し基礎控除を超える場合は申告が必要です(申告期限10ヶ月)。詳しくは相続税申告の期限と手続きの流れを確認してください。

必要書類一覧(裁判所公式情報より)

申述人全員が必要な書類

申述人の立場追加で必要な書類
子・孫(第一順位)被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本。代襲相続人(孫・ひ孫)の場合は被代襲者の死亡記載の戸籍謄本も必要
父母・祖父母(第二順位)被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本。先順位相続人(子・孫等)の死亡記載の戸籍謄本
兄弟姉妹・甥姪(第三順位)被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本。先順位相続人(子・孫・父母等)の死亡・放棄を証明する書類。収集量が最も多いため早めに着手が必要

※法定相続情報一覧図の写しで一部の戸籍謄本を代替できる場合があります(申述先の裁判所に確認)。
※書類が期限内に全て揃わない場合でも、申述書を先に提出し残りを後日追完できます(裁判所公式)。

費用の目安

費用の種類金額
収入印紙(申述書)800円(申述人1人あたり)
連絡用郵便切手550円程度(裁判所により異なる)
戸籍謄本(1通)450円(除籍謄本・改製原戸籍は750円)
相続放棄申述受理証明書150円(1通、必要な場合のみ)
弁護士・司法書士への依頼3万〜10万円程度

自分で申述する場合、書類取得費のみで数千円程度で済みます。

相続放棄で絶対にやってはいけないこと

以下の行為を行うと「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなります(民法921条)。

  • 被相続人の不動産を売却する
  • 被相続人の預貯金を払い戻す・引き出す
  • 借金を代わりに返済する
  • 財産を隠す・消費する

「葬儀費用に使っただけ」という場合でも、金額や状況によっては単純承認とみなされるリスクがあります。相続放棄を検討している間は、被相続人の財産には一切手を付けないことが鉄則です。

3ヶ月の期限を過ぎた場合はどうする?

① 期間の延長(伸長)申請

3ヶ月以内に判断できない事情がある場合、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立て」を行うことで熟慮期間を延長できます。
この申立ても3ヶ月以内に行う必要があります(裁判所公式)。財産調査に時間がかかっている・相続財産の内容が複雑などの理由が必要です。

② 期限後でも認められる可能性があるケース

最高裁昭和59年4月27日判決では、以下の条件が揃った場合に3ヶ月の起算点が「借金の存在を知った日」とされました。

  • 被相続人に財産が全くないと信じていたこと
  • そのように信じることに相当な理由があったこと(長年疎遠だったなど)
  • 借金の存在を知った時点から3ヶ月以内に申述したこと

期限後の相続放棄は認められるかどうかの判断が非常に難しいため、この状況になった場合は早急に弁護士に相談してください。

東京23区で多い相続放棄の相談例

東京家庭裁判所(本庁)が東京23区の申述窓口です。窓口持参または郵送で申述できます。

東京23区では地価の高さから不動産の評価額が大きくなりやすく、相続放棄に関しても以下のような相談が多い傾向があります。

  • 相続放棄後に固定資産税・住民税の督促が届いた
  • 相続放棄した不動産(空き家)の管理義務が心配
  • 疎遠な親族から相続人として突然連絡が来た
  • 被相続人の借金の有無が分からず3ヶ月以内の判断が難しい
  • 先順位の相続人が放棄したため突然自分に相続権が移った

特に空き家の管理については、相続放棄後も財産を現に占有している場合は次の相続人または相続財産清算人に引き渡すまで保存義務があります(改正民法940条1項)。

こんな場合は弁護士へ・こんな場合は司法書士へ

弁護士への相談が適しているケース

  • 借金が多額で債権者との交渉が必要
  • 3ヶ月の期限が迫っている・すでに過ぎている
  • 他の相続人との間でトラブルが生じている
  • 相続放棄の可否について法的判断が必要

東京23区の弁護士を探す →

司法書士への相談が適しているケース

  • 相続放棄の申述書類を作成・確認してほしい
  • 費用を抑えながら手続きを進めたい
  • 相続登記もあわせて依頼したい
  • 書類収集のサポートを受けたい

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よくある質問

3ヶ月の期限はいつから数えますか?

被相続人が亡くなったこと、かつ自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月です。通常は死亡当日が起算日になります(民法第915条)。

相続放棄を検討中に被相続人の預貯金を使ってしまいました。

財産の処分にあたるとみなされると単純承認が成立し、相続放棄ができなくなる可能性があります。金額・状況によって判断が異なるため、早急に弁護士に相談してください。

相続放棄の申述はどこに提出しますか?

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。東京23区の場合は東京家庭裁判所本庁が窓口です。

相続人全員が放棄した場合、借金はどうなりますか?

相続財産は相続財産法人となり、最終的には相続財産清算人(家庭裁判所が選任)が管理・清算します。債権者は相続財産から弁済を受けることになります。

相続放棄をすると子どもに相続権が移りますか?

移りません。相続放棄した人の子(代襲相続)は発生しません。ただし放棄により次の順位(父母・兄弟姉妹など)に相続権が移ります。事前に親族への影響を確認してください。

相続放棄したら生命保険金は受け取れますか?

受取人として指定されている生命保険金は相続財産ではなく受取人固有の財産です。相続放棄をしても受け取れます。

相続放棄したら死亡保険金に相続税はかかりますか?

受取人が相続放棄をした場合でも、生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象になることがあります。ただし「500万円×法定相続人の数」の非課税枠との関係など計算が複雑なため、税理士に相談することをおすすめします。

相続放棄申述受理証明書は必要ですか?

必須ではありません。債権者から請求された場合や、他の相続人が相続登記・金融機関手続きをする際に必要になることがあります。1通150円(収入印紙)で申請できます。

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※本記事の内容は裁判所公式情報・民法第915条・最高裁昭和59年4月27日判決をもとに作成しています(2024年時点)。個別の法律判断については弁護士・司法書士にご相談ください。

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